
支払調書の提出基準等の変更
2018/4/01
平成30年1月1日より生命保険契約に関する支払調書の提出基準等が変更されています。
支払調書とは
支払調書とは、特定の支払いをした事業者が、税務署に提出する書類のことです。
支払いを受けた人がきちんと申告しているかどうかを税務署がチェックするために利用されます。
生命保険金や個人年金を受け取ったり、生命保険を解約して解約返戻金を受け取った場合、この支払調書が生命保険会社から税務署へ提出されていました。
今回、提出基準と記載内容が変更となっています。
支払調書の提出基準の変更
【平成29年まで】
・1回の支払金額が100万円を超える保険金、解約返戻金を支払う場合
・年間20万円以上の年金等を支払う場合
【平成30年から】
平成29年までの基準に加えて、「死亡(相続)による契約者の変更」の場合が追加されます。
また、解約返戻金相当額が100万円以下の場合も調書を出すことになりました。
平成30年1月以降の生命保険の契約者変更は税務署に全て把握されることになります。
今までは契約者変更だけでは支払調書は提出されていなかったので、 納税者が自ら申告しない限り税務署が契約者変更を把握することはできませんでした。
今回の改正の趣旨は、税務署が契約者の変更情報を把握することで相続税及び贈与税の課税漏れを防止するためです。
(1)親が契約者、子が被保険者というケースでは、親が死亡しても保険金は支払われません。
でも、解約返戻金等相当額が「生命保険契約に関する権利」として相続税の課税対象となります。
しかし、保険金が支払われたわけではないため支払調書が提出されず、税務署がこれを把握できませんでした。
(2)契約者を変更した後に死亡保険金、満期保険金、解約返戻金を受け取った場合、本来は変更前の契約者が支払った保険料に対応する受取金は贈与税の対象となります。
しかし、支払調書は支払時点の契約内容で作成されるため、契約途中で名義変更があったことを税務署が把握できませんでした。
つまり、本来であれば、相続税や贈与税の対象となる生命保険契約が、 きちんと申告されるケースは稀だったのです。
こうしたことから、支払調書の提出範囲等が見直され、30年1月以降の契約者変更についても支払調書の対象となりました。
この改正は支払調書に関する改正であり、税金の取扱いはこれまでと何も変わりません。
契約者変更を前提に生命保険に加入する場合は、税務署に把握されていることを十分認識して正しい申告をしましょう。
(執筆:古舘)