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電子帳簿保存法
(電子取引データの保存)

2022年1月改正の電子帳簿保存法(以下「電帳法」)の問い合わせが増えてきました。

電帳法とは、決算書や総勘定元帳、請求書などの国税関係帳簿・書類を一定の条件を満たすことで、電子保存することを認める制度です。
保存方法の位置づけとしては、基本は紙保存で、条件を満たせば例外で電子保存も認めるということになります。


電帳法に基づいて、電子データを保存するには以下の3種類があります。
①電磁的記録での保存
②紙データをスキャナで保存
③電子取引データの保存


改正では①②の保存要件が緩和されました。
積極的に取り入れるべきと思われるかもしれませんが、実は③電子取引データの保存に対応することが最優先と言えます。
今回は電帳法の「電子取引データの保存」について整理します。



【電子取引データの改正に係る注意点】
現状は「電子取引」であっても、「紙に印刷して保存」と「電子での保存」の2つの保存方法が認められています。
そのため、郵送やFAXなどの紙で受け取った請求書と、電子データで受け取った請求書を紙に印刷して保存した場合には、紙での一元管理が可能です。


今回の改正では「電子取引」に該当した場合、紙に印刷して保存することは認められず「電子保存」のみとなります。
したがって、電子取引データの保存に対応することが最優先と考えられます。



【電子取引とは】
一般的には、電子メールによる請求書や領収書等の授受、Amazon・楽天といったネット通販サイトでの請求書や領収書等の授受、ペーパレス化のFAX、電子請求書等の授受をクラウドサービスで行った場合などが該当します。
※噛み砕いていますので、興味がある方は下記を参照してください。

国税庁:電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】.問2
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021006-031_03.pdf




【電子取引の保存要件】
⑴真実性の要件
真実性の要件は全部で4つ措置のいずれかをおこなうこととなっていますが、中小企業がすぐに導入できる措置は、下記1択と考えられます。

◆事務処理規定
正当な理由がない訂正・削除の防止に関する事務処理規定を定め、その規定に沿った運用を行い、備え付けること。
事務処理規定は国税庁がwordで用意してくれていますので、活用することをお勧めします。

国税庁:参考資料(各種規程等のサンプル)
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/0021006-031.htm

◆可視性の要件
⑴見読可能性の確保
保存場所にパソコン・ディスプレイ・プリンタなどを用意し、画面や書面で整然とした形式及び明瞭な状態で、速やかに出力できるようにしておくこと。

⑵検索機能の確保
帳簿の検索要件①~③に相当する要件を満たすこと。
※ダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には、②③は不要
※保存義務者が小規模な事業者でダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には、検索機能不要

① 取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先を検索の条件として設定することができること。
② 日付又は金額に係る記録項目については、その範囲を指定して条件を設定することができること。
③ 二以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することができること。

小規模な事業者とは、基準期間の売上高1,000万円以下の事業者(個人事業主であれば電子取引が行われた年の前々年、法人であれば前々事業年度)のことです。
売上高は消費税の課税売上高とは違い、非課税売上も含めることに留意してください。
また、基準期間がない新規開業者、新設法人などについては、検索機能の確保の要件が不要となります。

国税庁:電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】.問31~問34
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021006-031_03.pdf



【その他の留意点】
⑴青色申告の承認取り消し等
電子取引の保存要件を満たして保存できない(全て書面等に出力して保存している)場合に、保存義務を果たしていることにはならないため青色申告の承認が取り消しの対象となり得るとされ、国税庁への問い合わせも多かったようです。

国税庁:電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】.問42
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021006-031_03.pdf


これについては補足説明が11月にされました。
取引が正しく記帳されて申告にも反映されており、保存すべき取引情報の内容が書面を含む電子データ以外から確認できるような場合には、それ以外の特段の事由が無いにも関わらず、直ちに青色申告の承認が取り消されたり、金銭の支出がなかったものと判断されたりするものではありません。

国税庁:お問合せの多いご質問(令和3年 11 月).補4 一問一答【電子取引関係】問 42
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021010-200.pdf


⑵電子取引と書面の両方で受領した場合
電子データと書面の内容が同一であり、書面を正本として取り扱うことを自社内等で取り決めている場合には、当該書面の保存のみで足ります。
ただし、書面で受領した取引情報を補完するような取引情報が電子データに含まれているなどその内容が同一でない場合には、いずれについても保存が必要になります。

国税庁:お問合せの多いご質問(令和3年 11 月).【制度の概要等】関係(紙と電子データの重複)電取追1
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021010-200.pdf



【まとめ】
今回は、2022年1月改正の電帳法「電子取引データの保存」について整理しました。
改正電帳法では、電子取引について「紙に印刷して保存」が認められなくなります。
「電子取引データの保存」の要件は、事務処理規定を作成し備え付けること、検索機能の確保を行うことでした。

前述のとおり、保存要件を満たさなかったことにより、青色申告の承認が取り消し、金銭の支出がなかったものとはされません。
しかし、電子取引は電子データでの保存を要求しています。やらなくていいという結論にはしたくないですね。

今後もDX推進が考えられますので、電子化の流れに乗り遅れないようにしたいものです。

執筆:渡辺

配偶者居住権

今回は令和2年4月以降に発生した相続から新たに認められた、配偶者居住権(はいぐうしゃきょじゅうけん)という権利について解説します。


配偶者居住権とは、夫婦の一方がなくなった場合に、残された配偶者が、

・亡くなった人が所有していた自宅に、
・亡くなるまで又は一定の期間、
・無償で

住み続けることができる権利です。

自宅の価値を「所有権」と「居住権」に分けて考えます。

残された配偶者は自宅の「所有権」を持っていなくても、「居住権」を取得することで、亡くなった人が所有していた自宅に引き続き住み続けられるようになります。


【配偶者居住権のメリット】

配偶者居住権の価格は売却する権利がないため、自宅の所有権の価格よりも低くなります。
価格が低くなると残された配偶者は、預金など、自宅以外の遺産を多く取得しやすくなります。


例えば、遺産分割する自宅の価格が2000万円、その他の遺産は現金2000万円とします。
相続人は、妻と子1人、
妻と子の仲が悪く、子が法定相続分(2分の1)の遺産を要求するとします。

(改正前)
妻 自宅2000万円を相続
子 現金2000万円を相続

妻は住む場所はあるが生活費が不安です。

(改正後)※配偶者居住権を1000万円とします。
妻 配偶者居住権1000万円+現金1000万円=2000万円を相続
子 所有権1000万円+現金1000万円=2000万円を相続

妻は今の家に住みながら生活費も得られます。

【配偶者居住権の成立要件は?】
配偶者居住権が成立するためには、次の3つの要件をすべて満たす必要があります。
1.残された配偶者が、亡くなった人の法律上の配偶者であること
2.配偶者が、亡くなった人が所有していた建物に、亡くなったときに居住していたこと
3.①遺産分割、②遺贈、③死因贈与、④家庭裁判所の審判、のいずれかにより配偶者居住権を取得したこと
  (①は相続人の間での話し合い、②③は配偶者居住権に関する遺言又は死因贈与契約書がある場合、④は相続人の間で①遺産分割の話合いがまとまらない場合です。)

また、配偶者居住権は、登記をしなければ第三者に対抗できません。
配偶者居住権の登記ができるのは建物のみで、その敷地である土地には登記できません。

【配偶者居住権のデメリット・注意点】
・配偶者居住権は売却できません。
・配偶者居住権は、配偶者の死亡によって消滅します。
・通常の維持費は配偶者の負担です。
・敷地だけ売却された場合、配偶者居住権を主張できません。

【まとめ】
配偶者居住権は、令和2年4月から12月までに129件が法務局に登記されました。
登記件数は右肩上がりに増加していて、令和3年8月では84件の登記でした。
今後も配偶者居住権を活用した遺産分割協議が増えるものと考えます。

(執筆:古舘)

適格請求書発行事業者の登録申請

【適格請求書発行事業者の登録申請】

令和3年10月1日より消費税の適格請求書発行事業者(登録事業者)の登録申請が受付開始となります。

令和5年10月1日から消費税の仕入税額控除の方式として「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」が導入されます。

消費税の仕入税額控除の要件に「適格請求書の保存」が加わり、適格請求書発行事業者(登録事業者)のみが適格請求書(インボイス)を交付することができるため、これを発行するには、登録申請をして「適格請求書発行事業者」になる必要があります。

今回は、登録申請の注意点、適格請求書の記載内容、登録事業者公表サイトなどをまとめました。


【登録申請時期】

令和3年10月1日から受付開始
インボイス制度導入の令和5年10月1日から事業者の登録を受けるためには、原則として令和5年3月31日までに登録申請手続きをする必要があります。

※令和5年3月31日までに提出することが困難な事情がある場合は、令和5年9月30日までの間に登録申請書にその困難な事情を記載して提出し、税務署長より適格請求書発行事業者の登録を受けたときは、令和5年10月1日に登録を受けたこととみなされます。

【免税事業者の登録手続】

免税事業者が適格請求書発行事業者の登録を受けるためには、登録申請書に加えて「消費税課税事業者選択届出書」を提出し、課税事業者となる必要があります。
ただし、令和5年10月1日を含む課税期間中に登録を受ける場合は、登録を受けた日から課税事業者となる経過措置が設けられています。

≪登録日が令和5年10月1日の属する課税期間の場合(経過措置の適用を受ける場合)≫
個人事業主や12月決算の法人で、令和5年10月1日から登録を受ける場合は、「消費税課税事業者選択届」の提出は必要ありません。
また、登録日以降は課税事業者となるため、消費税の申告が必要になります。



≪登録日が令和5年10月1日の属する課税期間の翌課税期間以降の場合≫
個人事業主や12月決算の法人で、課税事業者となった課税期間の初日である令和6年1月1日から登録を受ける場合は、「消費税課税事業者選択届出書」を提出し、課税事業者を選択するとともに課税事業者となる課税期間の初日の前日から起算して1月前の日までに登録申請書の提出が必要となります。


参考:国税庁 適格請求書等保存方式の概要 P19 免税事業者の登録申請手続等
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0020006-027.pdf

【適格請求書発行事業者の義務】

適格請求者発行事業者には、原則、以下の義務が課されます。
〇適格請求書の交付
 取引の相手方(課税事業者)の求めに応じて、適格請求書又は適格簡易請求書を交付する。
〇適格返還請求書の交付
返品や値引きなど、売り上げに係る対価の返還等を行う場合に、適格返還請求書を交付する。
〇修正した適格請求書の交付
 交付した適格請求書、適格簡易請求書又は適格返還請求書(以下適格請求書等)に誤りがあった場合に、修正した適格請求書等を交付する。
〇写しの保存
 交付した適格請求書等の写しを保存する。

【適格請求書(インボイス)】
売手が買手に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝える請求書です。具体的には、現行の『区分記載請求書』に「登録番号」、「適用税率」及び「税率ごとに区分した消費税額等」の記載が追加されたものをいいます。


参考:国税庁 適格請求書等保存方式の概要 P6 適格請求書の記載事項
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0020006-027.pdf


①適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
②取引年月日
③取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
④税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜又は税込)及び適用税率
⑤税率ごとに区分した消費税額等
⑥書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

【適格簡易請求書】
不特定多数の者に対して販売を行う小売業、飲食店業、タクシー業等に係る取引については、適格請求書④~⑥の記載事項一部を省略した適格簡易請求書を交付することができます。

①適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
②取引年月日
③取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
④税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜又は税込)
適用税率又は税率ごとに区分した消費税額等

【口座振替・口座振込の場合】

契約書に基づき代金決済が行われ、取引の都度、請求書や領収書が交付されない取引でも、仕入税額控除を受けるためには、原則として、適格請求書の保存が必要です。適格請求書は、一定期間の取引をまとめて交付することも可能ですので、相手方から一定期間の取引についての適格請求書の交付を受け、保存することにより対応が可能です。
なお、適格請求書に必要な記載事項は、一の書類だけですべてが記載されている必要はなく、複数の書類で記載事項を満たせば、それらの書類全体で適格請求書の記載事項を満たすことになります。

例えば、口座振込の家賃の場合、適格請求書の取引年月日以外(上記①、③~⑥)が記載された契約書と取引年月日(②)を証明する通帳や銀行が発行した振込金受取書の保存により、書類全体として仕入税額控除の要件を満たすことになります。

【適格請求書発行事業者公表サイト】

適格請求書発行事業者公表サイトは、消費税法第57条の2に基づき、適格請求書発行事業者の登録・取消・失効状況を公表するものです。適格請求書発行事業者情報等の公表サイトへの掲載については、税務署での登録処理後、原則として登録簿への搭載日の翌日に行われる。
※令和3年10月中に登録簿へ搭載したものは、一括して令和3年11月1日に公表サイトへ掲載されます。

[ 公表事項 ]
①氏名又は名称
②登録番号
③登録年月日、取消年月日、執行年月日
④法人においては、本店又は主たる事務所の所在地
⑤特定国外事業者以外の国外事業者においては、国内において行う資産の譲渡等に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地
⑥個人事業者の主たる屋号(希望する場合)
⑦個人事業者及び人格のない社団等の本店又は主たる事務所等の所在地(希望する場合)

国税庁 適格請求書事業者公表サイトの運営方針PDF
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/invoice_shinei12.pdf

 

【まとめ】

インボイス制度の登録事業者の登録申請についてまとめました。
口座振替、口座引落により取引をしている場合も、仕入税額控除の要件を満たすために適格請求書の保存が必要になります。
取引ごとに契約内容を見直し、取引先と契約書の作り直しなど予想されます。
インボイス制度を理解して早めの準備が必要です。

(執筆:小林)

輸出免税(消費税)の適用の厳格化

事業者が国内で商品などを販売する場合には、原則として消費税を預かります。
しかし、販売が輸出取引の場合には、消費税を預かりません(輸出免税)。

輸出免税の適用を受けるためには、その取引が輸出取引である証明が必要です。
令和3年度税制改正により、輸出取引である証明の一部が厳格化されました。


【20万円以下の国際郵便の問題点】
商品の販売が輸出取引の場合には、消費税を預かりません(輸出免税)。
一方で、輸出する商品を国内で購入した場合は消費税を支払っているため、税務署から消費税が「還付」されることになります。

輸出免税の適用を受けるためには、輸出取引の区分に応じて輸出許可証などを保存する必要があります。
しかし、国際郵便を使った20万円以下の輸出は、税関に輸出申告する必要がなく、輸出許可証もありません。
この場合は、輸出した者が一定の事項(取引の相手方の氏名、取引年月日、取引の内容、対価の額)を帳簿に記載・保管することで、輸出免税が適用されていました。

しかしながら、悪意のある者が事実と異なる内容を帳簿に記載し、不正に消費税の還付を受けようとする行為が問題となり、今回の改正に至りました。


【保存書類の見直し】
20万円以下(注)の資産を郵便物として輸出する場合、輸出免税の適用を受けるための「保存すべき輸出の事実を証明する書類等」は、次のとおり見直しが行われました。
(注) この価額とは、FOB価格であり、原則として、当該郵便物の現実の決算金額(例えば、輸出物品の販売金額)となります。

 

国税庁HP:消費税法改正のお知らせ(令和3年4月)

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/r03kaisei.pdf


【適用時期】
令和3年10月1日以後に行われる資産の譲渡等からとなります。


【まとめ】
令和3年10月1日以後は国際郵便を使った20万円以下の輸出について改正されます。

引受けを証する書類・発送伝票等の控えなどを保存していないと、輸出免税の適用は受けられなくなるため、注意が必要です。
 
(執筆:渡辺)

退職金課税の適正化

退職金の税金について、次の見直しが行われます。

(1)改正前の概要
税金の対象になる退職所得の金額は次のように計算されます。


(退職金の額-退職所得控除額)×1/2※=退職所得の金額 → 税額計算へ

※平成24年税制改正により、勤続年数5年以下の役員等の退職金については、「2分の1」を乗じないこととされています。


 退職所得控除額は、退職者の勤続年数に応じて次のように計算されます。
【退職所得控除額】
 退職所得控除額.png
  


(2)改正の内容
退職所得金額の計算において「2分の1」を乗じることについて、勤続年数5年以下の「従業員」に対する退職金(「短期退職手当等」)についても、制限が加えられることになりました。

具体的には、短期退職手当等から退職所得控除額を控除した金額のうち、300万円を超える部分については「2分の1」を乗じないこととされました。


(3)計算例
勤続5年で退職金が1,000万円の場合の退職所得金額

【改正前】

(1,000万円-200万円)×1/2=400万円

【改正後】

①1,000万円-200万円=800万円
②800万円のうち300万円×1/2=150万円
③800万円のうち500万円 ← 300万円を超える部分は「2分の1」を乗じない
④ ②+③=650万円

結果、改正前と後で退職所得金額が250万円(650万円-400万円)増加することになります。


(4)適用関係
この改正は、令和4年分以後の所得税について適用されます。


(5)まとめ
退職金の税金は長年優遇されてきました。
外資系企業や天下り先など、短期間で退職を繰り返し、退職金を使った節税が問題視されていました。
今回の改正により役員だけではなく従業員の退職についても短期間の勤務で多額の退職金を受け取った場合には増税となります。


(執筆:古舘)

電子帳簿保存法の改正

令和3年度の税制改正において、電子帳簿保存法が改正されました。

 

納税者の帳簿書類保存の負担軽減を図るために、平成10年度税制改正の中で『電子帳簿保存法』が創設されています。

 

今回の改正において、帳簿書類を電子的に保存する際の手続等について、大きく見直しされました。

 

税法では、納税者が納税地にて備付け及び保存が必要な帳簿書類の保管期間は7年、紙での保存が原則と決められています。特例として、認めているのが『電子帳簿保存法』です。

 

1.令和3年度電子帳簿保存法の改正概要

 

【承認制度の廃止】

・電子帳簿保存の特例の適用にあたり、これまでは事前に税務署長の承認が必要でしたが、この承認制度が廃止となります。

 

≪適用時期≫

帳簿:令和4年1月1日以後開始する事業年度分から適用

書類:令和4年1月1日以後保存を開始するデータから適用

スキャナ保存:令和4年1月1日以後保存を開始するスキャナ保存から適用

 

【優良電子帳簿システムで作成された帳簿データの優遇制度】

・電子帳簿保存法の要件に従って作成及び保存がされる場合、税務調査において当該帳簿の記載事項に関し生じた申告漏れに課される過少申告加算税が5%減免されます。

 

≪適用時期≫

令和4年1月1日以後に法定申告期限が到来する当該事業年度から適用

 

【国税関係書類のスキャナ保存の要件を緩和】

・訂正又は削除の履歴が残るシステムで保存される場合のタイムスタンプ付与が不要

・重要な書類の入力期限を『業務サイクル後速やかに入力する(2ヵ月+7営業日)』に統一

・適正事務処理要件を廃止

・検索項目を『取引月日』『取引金額』『取引先』の3項目に限定

≪適用時期≫

令和4年1月1日以後保存を開始するスキャナ保存から適用

 

【電子取引データの厳格な保存】

・電子取引に係るデータの保存について、書面出力により整理、保存する場合の書面保存は不可

・検索項目を『取引年月日』『取引金額』『取引先』の3項目に限定

≪適用時期≫

令和4年1月1日以後行われる電子取引から適用

 

【罰則規定】

・帳簿書類及び電子取引データについて、電子帳簿保存法の要件に従った保存がされていない場合には、税法上保存義務がある帳簿書類として取り扱わない

・スキャナ保存及び電子取引データの改ざん等により不正計算がされている場合の重加算税を10%加重に賦課

≪適用時期≫

令和4年1月1日以後に法定申告期限が到来する当該事業年度から適用

 

2.スキャナ保存に関する改正事項

 

【承認制度の廃止】

令和4年1月1日以降に行う国税関係書類のスキャナ保存は税務署長の事前承認制度が廃止されます。

 

【スキャナ保存の要件(令和4年1月1日以降)】

①入力期限(請求書・領収書などの重要な書類)

・業務サイクル後速やかに入力(2ヵ月+7営業日)

(重要な書類以外の書類については適時に入力可能)

・書類の作成または受領から保存までの事務処理規定を定めること

 

②保存システム要件

・タイムスタンプ付与及び検証機能

 (訂正又は削除データが保存されるシステムに保存する場合は不要)

・訂正又は削除された事実とそのデータの内容が確認できること

・証憑データと関連する帳簿の仕訳情報との相互関連性を確保

・証憑データの入力時の情報(解像度・階調・書類の大きさ情報)が確認できること

・書類の入力者もしくはその者を直接監督する者の確認ができること

・検索条件(取引年月日・取引金額・取引先)で検索できること

 

③入力機器の要件

・解像度200dpi以上

・赤青緑の256階調以上(一般書類(※)は白黒の256階調で可)

※一般書類:見積書、注文書、検収書など資金や物の流れに直結しない書類

 

④出力機器の要件

・14インチ以上のディスプレイ、プリンタに整然とした形式で明瞭な状態で速やかに出力

 

3.電子取引に関する改正事項

 

【書面保存の廃止】

現行の電子帳簿保存法では、電子取引データの紙の保存を容認していましたが、今回の改正で紙保存ができなくなりました。令和4年1月1日以降に扱う電子取引データより適用となります。

 

【電子取引の保存要件】

①保存場所と保存期間

電子取引データは各税法に定められた保存場所において保存期間が満了するまで保存する必要があります。該当データを納税地で整然とした形式で明瞭な状態で出力できれば要件を満たすためクラウドサーバー上で保存することも可能です。

 

②電子取引データの措置

 電子取引データを保存する場合は、下記いずれかの措置を行った上でデータを保存する必要があります。(真実性の要件)

・タイムスタンプが付された後、取引情報の授受を行うこと

・取引情報の授受後、速やかに(又はその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに)タイムスタンプを付すとともに、保存を行うもの又は監督者に関する情報を確認できるようにしておくこと

・記録事項の訂正・削除を行った場合に、これらの事実及び内容を確認できるシステムまたは記録事項の訂正・削除を行うことができないシステムで取引情報の授受及び保存を行うこと

・正当な理由がない訂正・削除の防止に関する事務処理規定を定め、その規定に沿った運用を行うこと

 

③電子取引データの保存要件

電子取引データを保存する場合には以下の要件に従って保存する必要があります。

(可視性の要件)

・保存場所に、電子計算機、プログラム、14インチ以上のディスプレイ、プリンタ及びこれらの操作マニュアルを備え付け、画面・書面に整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力できるようにしておくこと

・電子計算機処理システムの概要書を備付けること

・検索機能を確保すること

 

【まとめ】

改正前の『電子帳簿保存法』は、税務署への承認申請、書類保存の業務スケジュールなど、書類の改ざんを防止するために要件が細かく設定されていました。そのため、非常に取扱いが難しい特例でした。今回の改正により、大幅に要件が緩和され中小企業でも取り入れやすくなっています。

 

ただし、要件に反している書類は、データで保存していた場合でも、税法上の領収書等として認められない罰則も規定されています。導入する際は明確な業務スケジュールの確立が必要です。

 

(執筆:小林)

インボイス制度

現在の消費税率は、10%・軽減8%の複数税率が採用されています。
改正当時はどうなることかと思いましたが、少しずつ慣れてきました。

せっかく慣れてきましたが、2023年10月には新しい制度の「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」が導入されます。
インボイス制度の前提として「適格請求書発行事業者の登録」が必要となります。
そして、登録申請は2021年10月1日から開始となります。

インボイス制度は馴染みのない方も多くいらっしゃると思います。
今回は制度概要を理解するために、請求書等の保存方式の変遷を整理しつつ、導入目的などを確認していきます。


【請求書等保存方式】(旧方式)
請求書等保存方式とは、帳簿を保存し取引の相手方(第三者)が発行した請求書等という客観的な証拠書類の保存を仕入税額控除(※)の要件とする方式です。

※消費税額控除とは
消費税の課税事業者は、原則として売上により預かった消費税から、仕入等により支払った消費税を控除した金額を国に納付します。
仕入等にかかる消費税を控除することを「仕入税額控除」といいます。


【区分記載請求書等保存方式】(現行)
区分記載請求書等保存方式とは、基本的に請求書等保存方式と同様になります。
異なる点は、請求書等の記載事項に軽減税率の適用対象とそれ以外の区分を明確にすることが追加されています。
最近の領収書(レシート)などをみると、税区分が何らかの方法で分かれていることが確認できます。

旧方式・現行では、免税事業者(課税売上高1,000万円以下の事業者など)から仕入れた場合も、仕入税額控除の対象となります。


【適格請求書等保存方式(インボイス制度)】(2023年10月開始予定)
◎導入目的
旧方式・現行の制度は、「消費税の益税問題」が長年議論されています。
消費税の益税問題のひとつに免税事業者の制度があります。
適格請求書等保存方式(インボイス制度)の導入目的は、この益税問題を解消することです。

◎消費税の益税問題
各種メディアで言葉だけは聞いたことがある方もいるかもしれません。
簡単にお伝えするため、二者間取引でご説明します。

前提:フリーランスが株式会社Aに税抜10,000円(消費税1,000円)を請求した場合

◆本来あるべき納税のすがた

消費者である株式会社Aから受け取った消費税1,000円を、課税事業者であるフリーランスが納付します。
国は1,000円の税収となります。
本来あるべき納税のすがたと言えます。

◆免税制度による益税

消費者である株式会社Aから受け取った消費税1,000円は、免税事業者であるフリーランスの手許に残ります。
株式会社Aがフリーランスに消費税を払っているのにもかかわらず、国は税収がなくなります。
これを消費税の益税問題といいます。

◎適格請求書等保存方式(インボイス制度)
インボイス制度導入後は、「適格請求書発行事業者」だけが「適格請求書」を発行できます。
さらに、適格請求書発行事業者は、課税売上高1,000万円以下の事業者などであっても消費税の納付義務が生じます。

◆インボイス制度

消費者である株式会社Aから受け取った消費税1,000円を、課税事業者であるフリーランスが納付します。
国は1,000円の税収となります。
つまり、前述の「本来あるべき納税」と同じとなります。

◆インボイス制度施行後の免税事業者

国の税収はなくなりましたが、株式会社Aはそもそもフリーランスに消費税を払っていません。
これも「本来あるべき納税のすがた」と言えます。

このようにインボイス制度は、消費税の益税問題を解消することが期待されています。


【まとめ】
インボイス制度は、消費税の益税問題を解消するために導入される制度でした。
現行の「区分記載請求書」は、誰もが発行できます。
一方で「適格請求書」は、適格請求書発行事業者(課税事業者)しか発行することができなくなります。

国税庁HPも5月24日に「インボイス制度特設サイト」がリニューアルされました。
興味がある方は参考にしてください。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice.htm


執筆:渡辺

猶予制度を利用してもなお
納付困難な場合

新型コロナ感染症の影響により納税が困難な納税者については特例により1年間の納税猶予が認められていましたが
この特例申請は2021年2月1日に終了しています。

特例猶予を適用してもなお納付が困難な場合、既存の猶予制度により分割納付を依頼する必要があります。

さらに、既存の猶予制度を活用しても、納付が困難な場合、その事情を税務署に相談し、「滞納処分の停止」をしてもらう必要があります。

滞納を放置すると延滞税の賦課及び滞納処分への移行などのリスクがあるので税務署に相談する方が賢明です。


【滞納処分の停止】
滞納処分を執行することによって滞納者の生活を著しく窮迫させるおせれがあるなど、一定の要件に該当する場合、滞納処分の執行を停止することがあります。
滞納処分の停止は、最終的には国民の納税義務の消滅につながる手続きです。

1.滞納処分の停止の要件
滞納者が次の事実のいずれかに該当するときは、滞納処分の執行を停止することができます。
 ・滞納処分を執行することができる財産がないとき
 ・滞納処分を執行することによって滞納者の生活を著しく窮迫させるおそれがあるとき
 ・滞納者の所在及び滞納処分を執行することのできる財産がともに不明であるとき

2.滞納処分の停止の手続き
 滞納処分の停止は、滞納者の申請に基づくものではなく、税務署長の職権で行います。
 また、滞納処分の停止をしたときは、税務署長はその旨を滞納者に通知します。

3.滞納処分の停止の効果
滞納処分の停止による効果には、次に掲げるようなものがあります。
(1)差押えの解除等
滞納処分の執行を停止した場合において、すでに差し押さえている財産があるときは、その差押えは解除されます。
また、滞納処分を停止している期間中は、新たな差押えをすることはできません。
(2)納税義務の消滅
滞納処分の停止が3年間継続したときは、停止した国税の納税義務は消滅します。
(3)延滞税の免除
滞納処分の停止をした国税に係る延滞税のうち、停止をした期間に対応する部分の金額は免除されます。


まだまだ先が見通せない新型コロナ感染症の影響ですが一日も早く以前の生活、経済活動が再開されることを
祈念いたします。

(執筆:古舘)

低解約返戻金型生命保険の
課税問題の見直し

保険契約日から一定期間は解約返戻金額が低く設定される低解約返戻金型生命保険の所得税の取り扱いについて、国税庁が2021年6月末の改正を目指していることが報道されました。

今回は、その改正内容の方向性についてまとめました。


低解約返戻金型生命保険とは、契約後数年間は解約返戻金額を大幅に少なくし、その後解約返戻金額が引きあがる契約内容の生命保険です。

契約者を法人として解約返戻金が低いうちに被保険者である役員や従業員へ名義変更し、解約返戻金が高くなった段階で解約することで、低い自己資金で多額の解約返戻金を受け取ることができます。

また、名義変更した際の「経済的利益の供与」は『給与所得』として課税、解約した際の実際の解約返戻金は『一時所得』として課税されます。


「経済的利益の供与」は、現在、名義変更時の解約返戻金相当額ですので、低い解約返戻金相当額であれば、給与課税される金額も低くなります。
また、一時所得は、最高50万円の特別控除と2分の1課税となり、被保険者に税務メリットが大きい内容でした。

今回の改正内容は、「経済的利益の供与」を『解約返戻金相当額』から『資産計上額』への評価に変更が検討されています。

具体的には、解約返戻金が法人の資産計上している保険料の7割未満の場合は、『資産計上額』で評価するように見直す方向で検討がされています。
『資産計上額』は、2019年に新設された法人税基本通達9-3-5の2に取り扱いがあり、下記の図となります。


 

区分

資産計上期間

資産計上額

取崩期間

最高解約返戻率50%超70%以下

保険期間の開始の日から、当該保険期間の100分の40相当期間を経過する日まで

当期分支払保険料の額に100分の40を乗じて計算した金額

保険期間の100分の75相当期間経過後から、保険期間の終了の日まで

最高解約返戻率70%超85%以下

当期分支払保険料の額に100分の60を乗じて計算した金額

最高解約返戻率85%超

保険期間の開始の日から、最高解約返戻率となる期間(当該期間経過後の各期間において、その期間における解約返戻金相当額からその直前の期間における解約返戻金相当額を控除した金額を年換算保険料相当額で除した割合が100分の70を超える期間がある場合には、その超えることとなる期間)の終了の日まで

(注) 上記の資産計上期間が5年未満となる場合には、保険期間の開始の日から、5年を経過する日まで(保険期間が10年未満の場合には、保険期間の開始の日から、当該保険期間の100分の50相当期間を経過する日まで)とする。

当期分支払保険料の額に最高解約返戻率の100分の70(保険期間の開始の日から、10年を経過する日までは、100分の90)を乗じて計算した金額

解約返戻金相当額が最も高い金額となる期間(資産計上期間がこの表の資産計上期間の欄に掲げる(注)に該当する場合には、当該(注)による資産計上期間)経過後から、保険期間の終了の日まで

出典:国税庁HP 法人税基本通達9-3-5の2

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_03.htm

 


今回の見直しは、2019年に新設された法人税基本通達9-3-5の2に基づき資産計上されている契約(2019年7月8日以降締結した契約)について、今回の改正日後に名義変更を行った場合に適用することが想定されています。
実際に見直しとなる場合は、通達の改正となるためパブリックコメントを経ての改正となります。

【まとめ】
低額な金額で名義変更したあとに、被保険者が得をする節税手法に国税庁がメスを入れることになりました。
今回の見直しにより、名義変更時の給与課税の対象額が大幅に増加する事になり、受け取る解約返戻金が『一時所得』として2分の1課税が適用されるとしても、同保険契約の仕組みを利用した名義変更スキームの税務メリットはこれまでよりも大きく低減することになります。
また、2019年の改正に基づき2019年7月8日以降締結した契約について適用になると想定されていますので、今後の動向が注目されています。

(執筆:小林)

<参考文献>
2020週刊税務通信 税務研究会 No.3647 P2

 

医療費控除

緊急事態宣言の再発令に伴い、令和2年分の確定申告期限が令和3年4月15日に延長されました。医療費を支払った場合、確定申告で「医療費控除」を利用することにより、税金がもどってくる可能性があります。
 今回は医療費控除を正しく理解するため、制度概要から留意点までまとめてみます。

【医療費控除の制度概要】
入院や出産、歯の治療等で本人または本人と生計を一にしている親族が、医療費を支払った支払った場合において、その支払った医療費が一定額を超えるときに受けることのできる所得控除です。

【医療費控除額の計算方法】
医療費控除の対象となる金額は、次の算式で計算した金額(最高200万円)となります。

支払った医療費の総額-保険金等で補填される金額(※1)-10万円(※2)

※1:生命保険契約や損害保険契約に基づき医療費の補てんを目的として支払を受ける医療保険金や入院費給付金、傷害費用保険金、健康保険組合から支払いを受ける高額療養費・出産育児一時金など
※2:年間の総所得が200万円未満の場合、総所得金額の5%の金額

【還付金額の目安の計算方法】
医療費控除額×所得税率=還付金額の目安
さらに、住民税も軽減されます。

【医療費の対象】
医療費控除の対象となる医療費は、「治療目的」か「それ以外」かが重要となります。美容目的・予防目的といった医療費は控除の対象となりません。
例えば、美容目的で行う歯列矯正費は医療費の対象になりません。一方で、発育過程の子どもの歯列矯正費は、歯や顎の正しい成長を促すための治療目的と考えられるため対象になります。
また、人間ドックや生活習慣病の定期検診費は予防目的のため医療費の対象となりません。ただし、重大な疾病が発見され、引き続き治療した場合には対象となります。

国税庁HP
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/04_1.htm

【その他の留意点】
〇未払医療費
その年中に治療等を受けた医療費であっても、その年の12月31日現在で未払いの医療費は、医療費控除の対象になりません。

〇入院給付金・保険金の取扱い
入院等をした場合、実際の医療費よりも多く入院給付金等を受け取る場合があります。この場合、入院給付金等の全額をまるまる医療費からマイナスするのではなく、実際の医療費と入院給付金等を個別対応させます。
医療費10万円、入院給付金20万であれば、10万円だけを医療費からマイナスします。なお、得した10万円は非課税になります。

〇医療費控除の明細書
平成29年度の税制改正により「医療費控除の明細書」の添付が必要となりました。
医療保険者等が発行した医療費通知(一定の項目が記載されたもの)を添付することで、明細書の記入を一部省略できます。
ただし、医療費通知は自費診療の記載がない、集計期間が年の途中までの場合があるなど、注意する点もあります。このようなときは、領収書等を基に医療費控除の計算を行います(領収書等は確定申告期限等から5年間保存)

〇セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)
その年中に健康の保持増進及び疾病の予防の取り組みとして一定の検査や予防接種を行っている場合、セルフメディケーション税制の対象となります。
自己または同一生計親族のために支払ったスイッチOTC医薬品(医療用から転用された市販薬)の合計額が年間12,000円を超えたときは、その超えた額を総所得金額等から控除(上限88,000円)することできます。 

【まとめ】
 今回は医療費控除の概要から、いくつかの留意点をまとめました。医療費控除はサラリーマンを含め、誰もが利用できる制度です。該当する可能性がある場合、一度確認することをおすすめします。
 また、新型コロナウイルス対策でマスクやアルコール除菌など出費が多くなった方も少なくないと思います。これらは治療目的ではないため、残念ながら医療費の対象外となります。

(執筆:渡辺)

在宅勤務に係る自宅経費の費用負担

新型コロナウイルス対策として様々な企業が在宅勤務を実施しています。

短期間であれば自宅のインターネット代、電話代、水道光熱費などを企業が負担することは少ないと思います。

ただ、長期間在宅で業務を行わせている場合には企業が在宅勤務に係る費用を負担するケースがあります。


今回は企業が費用を負担した場合の課税関係について解説します。

【インターネット、電話代などの通信費】
通信費のうち、在宅勤務日数分の2分の1を業務使用部分として非課税になります。

例えば、インターネット接続にかかる通信料については【算式1】により計算したものを企業が従業員に支給する場合、給与として課税しないとしています。
 

電話代のうち基本料については、インターネット接続にかかる通信料と同様です。

一方、通話料については、通話明細書等により業務のための通話に係る料金が確認できるため、
その金額を企業が従業員に支給する場合には、給与として課税しないとしています。

なお、「業務のための通話を頻繁に行う業務に従事する従業員」の通話料については、【算式1】の使用が認められます。

「業務のための通話を頻繁に行う業務」とは、
国税庁によると、「営業担当や出張サポート担当など、顧客や取引先等と電話で連絡を取り合う機会が多い業務として企業が認めるもの」とされています。


【電気料金は床面積等で業務使用部分を計算】
電気料金については、【算式2】により、「自宅の床面積」に占める「業務のために使用した床面積」等に基づき業務使用部分を計算します。

なお、業務のために使用した部屋の床面積がわからない場合には、部屋の畳数から算出することも認められます。

【事務用品等の支給】
パソコンなどの事務用品については、企業が従業員に支給した場合(事務用品の所有権が従業員に移転する場合)は現物給与として課税の対象になります。
「貸与」の場合は課税されません。


【まとめ】
非課税になる金額の計算が複雑で現実的ではない感じがします。
社宅家賃の本人負担が50%でも給与課税にならないのを考えると個人が負担した在宅関係費用についても50%までであれば給与課税にはならないと思います(あくまでも私見です)。

(執筆:古舘)

令和3年度税制改正大綱

・住宅ローン控除の特例の延長
控除期間13年の特例の適用期限を延長し、令和4年末までの入居者を対象とするとともに、適用延長期間(※)に限り、合計所得金額1,000万円以下の者について面積要件を50㎡以上から40㎡以上に緩和する。
(※)居住用家屋の新築は令和2年10月1日~令和3年9月30日までの契約
分譲・既存住宅、増改築等は令和2年12月1日~令和3年11月30日までの契約

・退職所得課税の適正化
勤続年数5年以下の法人役員等以外の退職金についても、退職所得控除額を控除した残額のうち300万円を超える部分について2分の1課税を適用しない。
適用時期:令和4年分以後の所得税について適用される。

・セルフメディケーション税制の見直し
対象となる医薬品の範囲について見直しを行い、適用期間を令和8年度まで5年間延長する。医薬品の範囲見直しは令和4年度分以後の所得税から適用される。医薬品の具体的な範囲については、今後決定となる。

【資産課税】

・教育資金、結婚・子育て資金の一括贈与の非課税措置の見直し
贈与者死亡時に贈与資金の費消していない残高のうち相続税の対象が拡大となる。贈与者死亡の3年以内の贈与の残額からすべての贈与の残額に改正となる。また、受贈者が孫・ひ孫の場合は相続税額の2割加算の適用となる。
結婚・子育て資金の受贈者の年齢要件が「20歳以上50歳未満」から「18歳以上50歳未満」となる。
 
適用時期:改正は令和3年4月1日以後の贈与等により取得する金銭等について適用し、
制度の適用期間を令和5年3月31日まで、2年間延長する。
ただし、結婚・子育て資金の受贈者の年齢要件は、令和4年4月1日以後の適用となる。

・住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置の据え置き等
令和3年4月以降に縮小の非課税枠を令和3年12月末まで据え置きとする。(面積要件について、住宅ローン控除と同様の措置となる。)
 適用時期:令和3年1月1日以後の贈与により取得する住宅取得等資金に係る贈与税について適用する。

・土地の固定資産税等の負担調整措置
宅地等及び農地の負担調整措置(※)について、令和3年度から令和5年度までの間、現行の負担調整措置の仕組みを継続する。また、負担調整措置等により税額が増加する土地について、令和3年度に限り前年度の税額の据え置きとする。
(※)負担調整措置とは、固定資産税評価額が急激に増額した場合でも、税負担が急激に増えないように、税額計算の基となる課税標準額を徐々に増やす措置。

【法人課税】

・カーボンニュートラルに向けた投資促進税制の創設
2050年カーボンニュートラルに向け、産業競争力強化法の改正を前提に創設される「中長期環境適応計画(仮称)」に基づき導入される脱炭素化効果の高い先進的な投資(化合物パワー半導体等の生産設備への投資、生産プロセスの脱炭素化を進める投資)について、税額控除(10%・5%)又は特別償却(50%)ができる措置を創設する。
適用要件 
①青色申告書を提出する法人
②産業競争力強化法の改正法の「中長期環境適応計画(仮称)」について認定を受ける
③対象設備等の取得をし、国内の事業の用に供すること
適用時期:産業競争力強化法の改正法の施行の日から令和6年3月31日まで

・デジタルトランスフォーメーション(DX)投資促進税制の創設
産業競争力強化法の改正を前提に創設される「事業適応計画(仮称)」に従って導入されたソフトウェア等に係る投資について、税額控除(5%・3%)又は特別償却(30%)ができる措置を創設する。
適用要件
①青色申告書を提出する法人
②産業競争力強化法の事業適応計画について認定を受ける
③対象ソフトウェア等を購入し、国内にある事業に供すること
適用時期:産業競争力強化法の改正法の施行の日から令和5年3月31日まで

・中小企業者等に対する軽減税率の延長
中小企業者等の年所得800万円以下の部分に適用される法人税の軽減税率15%の適用が令和3年3月31日までに開始する事業年度から2年間延長される。
適用時期:令和5年3月31日までに開始する事業年度まで

・中小企業向け設備投資促進税制の見直し・延長
中小企業等が設備投資を行った場合の優遇措置について、一部を見直したうえ、適用期限を2年間延長する。
適用期間:令和5年3月31日までの間に事業の用に供した資産に適用される。

・中小企業における所得拡大促進税制の見直し・延長
給与等の支給額の増加割合の判定を継続雇用者から国内雇用者全体の給与支払額へと
見直しを行った上、その適用を2年間延長する。
適用時期:令和3年4月1日から令和5年3月31日までの間に開始する事業年度について適用される。

・中小企業の経営資源の集約化に資する税制の創設(中小M&A税制)
中小企業等経営強化法の改正を前提に、経営力向上計画(経営資源集約化措置(仮称)が記載されたものに限る。)の認定を受けたものが、経営力向上計画に従って他の法人の株式等を購入によって取得(取得価額10億円以下のものに限る)し、かつ取得の日を含む事業年度終了まで引き続き有している場合、当該準備金の損益算入を認める。

適用内容
(1)株式等の取得価額の70%以下の金額を中小企業事業再編投資損失準備金として積み立てたときは、
当該金額の損金算入を認める。
(2)(1)の準備金の金額は、5年間の据置期間経過後、原則として5年間で均等額を益金算入する。
適用時期:中小企業等経営強化法の改正法の施行の日から令和6年3月31日まで

【消費課税】
・車体課税(エコカー減税、環境性能割)の見直し・延長
自動車重量税のエコカー減税及び自動車税・軽自動車税の環境性能割について、新たな2030年度燃費基準の下での区分の見直しをする。(改正は令和4年5月1日より施行)
環境性能割の臨時的軽減について、適用期限を9か月延長し、令和3年度末までの取得を対象とする。

【納税環境整備】
・押印義務の見直し
税務署長等に提出する国税関係書類において、実印・印鑑証明書を求めている手続等(※)を除き、押印義務を廃止する。地方公共団体の長に提出する地方税関係書類についても同様とする。
(※)遺産分割協議書、所有権移転登記承諾書、抵当権設定登記承諾書、納税保証書など
適用時期:令和3年4月1日以後に提出する税務関係書類について適用される。


今回の税制改正では、新型コロナウィルス感染症の打撃を受けた企業や個人の負担を軽減する措置が多くとられています。一部、課税拡大の改正もありますが、ウィズコロナ、ポストコロナに向けた新しい経済構造の実現のため、新しい税制も創設されました。とくに、中小企業における所得拡大促進税制は、適用要件がより簡易になりました。しかし、適用判定は、雇用調整助成金などを含めて計算しますが、税額控除額の計算には、雇用調整助成金等を除いた金額が上限になるので注意が必要です。


(執筆:小林)

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